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家畜栄養生理学実験 2006
2006年12月1日

’06年度後期の畜産科学科3年生必修の家畜栄養学実験の様子です。
慣れない実験に戸惑いながらも、がんばるウイウイしい3年生の模様をお伝えします。

1回 サンプリング & プロトゾア計数

  • 粗飼料多給のヒツジと、濃厚飼料多給のヒツジについて、給餌前から給餌後1~4h の間で経時的にルーメン液をサンプリングし、各種分析用に保存する。
  • またサンプリング直後のルーメン液を顕微鏡でみることで、ルーメン微生物の一種であるプロトゾアの動態を観察し、さらにその数を数えてルーメン液1mlあたりのプロトゾア数を計算する。
サンプリングしたルーメン液をすぐに観察するために、 牛舎に顕微鏡を運んで観察を行います。 ヒツジの給与飼料の違いがプロトゾア数にも表れてるかな?
見慣れていないと、なかなかプロトゾアの見分けは難しい所。 そんな時はTAがやさしく指導。 後藤さんが松永さんに色々とアドバイスしているみたいです。
3年生は5つの班に分かれ、各班ごとに異なる時間にサンプリングして経時変化を見ます。 一番最後の班は給餌後4hで、サンプリングの時にはもう暗くなり始めていました。
集中して観察する井出くん。 3年生は皆プロトゾア観察は初めてのようで、動態を観察するときはその活発な動きに驚く声も多くあがっていました。

これが第1回目のサンプリング & プロトゾア計数の様子になります (写真が少なくて申し訳ないですm(_ _)m)。
上でもいったようにみんなプロトゾア観察は初めてで、形がおもしろいとか動きが速い、また変わったのだとプロトゾアがかわいいなんて言う人もいて、みんな思い思いの感想を述べていました。
次回はこのプロトゾアをスケッチして、種類の同定や細胞内小器官の特定を行ったときの模様をお送りします。

2回 プロトゾアスケッチ

顕微鏡によりルーメン微生物の一種であるプロトゾアを観察し、その細胞内器官や飼料植物片を体内に取り込む様子を観てスケッチをしました。

前回計数したプロトゾアを、今度はスケッチします。 みんな真剣な表情で顕微鏡に向かいます。
今回ターゲットとして探したのは、大型で植物片を取り込んでいるプロトゾアです。怪しげなやつを見つけた矢野君がTAの後藤さんに相談中。
スケッチが終わったら今度はプロトゾアの写真を撮り、それをパソコンに取り込んでプリントアウトします。
スケッチが終わったら今度はプロトゾアの写真を撮り、それをパソコンに取り込んでプリントアウトします。
酒井君、顕微鏡をのぞきすぎて目が疲れたんでしょうか? どうやら片目で見ようとしている模様。
撮影した写真とともに記念撮影! いいのがとれましたか?
撮影者:鎌田さん Diplodinium 属のプロトゾアでかなり大型のものです。 緑の粒で見える細かな植物片を取り込んでいるのが分かります。
撮影者:渡部さん こちらは小型のものですが、はっきりと大き目の植物片を取り込んでいるのが分かります。細胞内の水色に染まっているものは核(大核)です。

みんな慣れないスケッチに苦労しながらも、いろいろなプロトゾアを見て楽しみながら観察できたようです。
次回はルーメン内のヌクレアーゼ(DNAse)活性の測定の様子をお届けします。  

3回 ルーメン内ヌクレアーゼ活性の測定

ルーメン内では外部から侵入する微生物やDNAは速やかに駆逐され、複雑だが安定な微生物生態系が保たれています。今回はこいうった防御機構の主体であるルーメン内のヌクレアーゼ(DNAse)活性を測定しました。

今回、プラスミド溶液にルーメン液を加えてインキュベートし、プラスミドの分解速度からヌクレアーゼ活性を推察します。 真剣な顔で実験に取り組む川崎くん(左)と矢野くん(右)。
前回までとは違い今回は使う試薬がとても多いです。 また数μlの試薬を分注したりもして、正確なピペッティングが要求されてきます。
各時間(0、0.5、1、2、4、8min)酵素反応させたプラスミド溶液を電気泳動にかけます。 慎重にサンプルを入れる高木君。手が震えてますぜ。
こちらは皆に見守られてピペッティングする藤井君。 みんなピペットの持ち方に個性があっておもしろいです。
1時間ほど泳動したあと、ゲルの写真を撮りました。 画面にゲルの映像が浮かび上がる瞬間はドキドキです。
こちらは5班のゲルの写真になります。 真ん中で大きく分けて左が粗飼料多給ヒツジのルーメン液、右が濃厚飼料多給のものを用いた結果です。 そしてそれぞれ左から分子量マーカー、0、0.5、1、2、4、8minインキュベートしたサンプルとなっています。 濃厚飼料多給の方が活性が高く、また両者ともに時間経過とともにプラスミドのバンドが分解されているのが分かります。

先ほども言ったとおり、今回だけに限らず実験においては正確なピペッティングを行うことは非常に重要です。
栄養学実験では例年この機会にピペッティングの正確さを競うピペッティングコンテストを行っています。
ここでその様子を紹介するのでどうぞご覧ください。

ルールは、1mlに合わせたピペットで水を吸って電子天秤で重さを量り1g(=1ml)に近い値を出した者勝ちというものです。まず一番初めに見本としてTA竹田が挑戦。がしかし最初から大きくはずれる値が・・・。んー、ドンマイ。
今度は4班の八城くんが挑戦。 1回目こそ大きく外れるものの、2~5回目はコンスタントに1g近くを連発し、この時点で暫定トップに!
次は3班の柴垣くんがトライ。最初こそよかったものの後半崩れて最下位に。本人もこの苦笑い。
最後は2班の小林さんがチャレンジ。 しかし0.1g(=100μl)近いものすごい誤差が。 ショックで打ちひしがれるの図。もちろんこれにより堂々の単独トップに(下から)。
結果、一位は4班に!以下二位は1班、3位は5班となりました。勝利した4班に優勝賞品(ハイチュウ)の贈呈です。
2位、3位にも賞品があたりました。 5班のこれは一体なんでしょうか?

今後どこの研究室にいってもピペッティングがうまいに越したことはないので、皆さんこれを機会に練習(?)してみてください。
次回はルーメン内セルラーゼ活性の測定をお届けします。

4回 ルーメン内セルラーゼ活性の測定

・・・ スミマセン、写真をとり忘れてこの回はありません。

 5回 ルーメン内の揮発性脂肪酸(VFA)の定量

ルーメン内における主要な発酵産物である揮発性脂肪酸(VFA)を、ガスクロマトグラフィーを用いて定量し、そこからルーメン内のVFA濃度を求めました。

まずはじめに小林先生のほうからガスクロマトグラフィーの説明がありました。
その後、実際にガスクロを使ってVFAの測定に入りました。 ガスクロエキスパートの鈴木君が使い方を懇切丁寧に指導。
サンプルを注入する瞬間。この注射器をさすのにはコツがいて、みんな中々に苦戦していました。
1つサンプルを打ったら次は12分後に別のサンプルをあっていきます。サンプルを打つのは一瞬なんで結構待ち時間があるのがガスクロの特徴です。
そんな待ち時間の合間に去年までの栄養学実験発表スライドを観賞。凝ってるのやらシンプルなものまでさまざま。今年はどんなプレゼンになるのか楽しみです。
すべてのサンプルが打ち終わったらパソコンで濃度を計算します。機器の操作だけでなくこうしたデータ解析も実験における重要なスキルのひとつです。

今回で実験も5回目、発表に向けて着実にデータがたまってきました。
次回はルーメン内のアンモニアの定量をお届けします。

6回 アンモニアの定量

ルーメン内微生物の窒素源として重要なアンモニアを、フェノール次亜塩素酸法で比色定量しました。

もう栄養学実験も6回目ということで、器具の扱いについてもだいぶ手馴れてきたようです。
今回の実験は試薬を混合するのみで特に難しい工程はありませんが、その代わりピペッティングが非常に重要です。 わずかな誤差が結果に大きく影響してしまいます。
そんなわけでみんな今日は特に慎重に分注を行っています。
ここでは井出くんがピペット担当のようです。
フェノールを使う時は吸い込むと有害なのでドラフト内で作業します。内堀くんは少し窮屈そうです。
試薬を混合したら反応させるのに30分ほど待ちます。 その待ち時間の合間のワンショット。 1班は仲が良いですね。ただ坂井くんもう少し前にでようよ。
反応後の試薬について、分光光度計を用いて吸光度を測定し、溶液中のアンモニアを定量します。 あらかじめアンモニア濃度の分かっている標準液を測定して検量線を作成し、そこから未知サンプルの濃度を求めます。
作成した検量線と各サンプルの吸光度から、サンプル中のアンモニア量を求めます。今回は全ての班で検量線が理論値に非常に近く、ピペッティングの正確さが際立ちました。
今回、各班で検量線の正確さを競う検量線コンテストを行いました。どこもかなり正確で接戦になりましたが、結局1位が5班、2位3班、3位が2班となりました。 これは2班矢野君の賞品授与の図。
そしてこちらは優勝した5班の井出君です。 オメデトウゴザイマス!

 

 

早いもので今回が実験の最後の回になります。この次の週はいよいよ栄養学実験の集大成であるプレゼンテーションです。
人前で発表するまたとない機会ですので皆さんがんばってください。
次回はそのプレゼンの様子をお届けします。