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家畜栄養生理学実験 2016
2016年12月1日

この授業では、前半はヒツジ(反芻動物)、後半はラット(単胃動物)を用いて、動物が摂取した飼料がお腹の中でどう代謝されていくのかを考えます。
慣れない実験に戸惑いながらも、がんばる初々しい3年生の模様をお伝えします。

第1回 ルーメン液サンプリング、pH測定、in vitro培養の準備およびプロトゾア観察

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、試験管内(in vitro)で粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、それぞれの培養液中に含まれる微生物や微生物による発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン内発酵について考えていきます。

初回の実験ではヒツジからルーメン液を採取し、pH測定と微生物の一種であるプロトゾアの観察を行いました。さらに採取したルーメン液を試験管内の培地に接種しました。

本日はつなぎに着替えて農場に集合です。天気があまり良くなかったのが残念。
ヒツジからルーメン液を採取しました。お腹の中は思っていたより温かくてびっくりです。
こちらはpH測定の様子です。pHメーターも初めてでしょうか。
プロトゾアの観察をしています。
何種類のプロトゾアを見つけられるか勝負です!
in vitro培養の準備をします。ピペットでルーメン液を吸い上げています。飲み込まないように慎重にね…!
班員と協力して頑張っています。ここから24時間、ルーメン液の中の微生物を試験管内で培養します。

来週は粗飼料多給区、濃厚飼料多給区それぞれの糖質分解酵素の活性を測定します。
実験の基礎であるピペッティングを実践するとともに、酵素による飼料の分解について調べていきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:金城)

第2回 糖質分解酵素の活性測定

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、培養液中に含まれる微生物や発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン発酵について考えていきます。
2回目の実験ではin vitro培養サンプルの糖質分解酵素(アミラーゼ・セルラーゼ)の活性を測定し、粗飼料多給条件および濃厚飼料多給条件でこれらの酵素活性がどのように異なるのかを確認しました。

試験管に必要な試薬を分注していきます。
今回の実験はマイクロピペット操作が鍵となるので、
学生も慎重に作業を進めます。
サンプル数が多いので、班員同士の協力が必要です。
試験管の分注が完了したら、60分間培養し、酵素を反応させます。
酵素反応終了後、試験管を沸騰水中に入れ酵素反応を停止させているところです。
最後に分光光度計で吸光度を測定します。
粗飼料多給条件と濃厚飼料多給条件それぞれで、予想通りの結果は出たのでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はSCFA濃度、アンモニア態窒素濃度の測定を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:奈良部)

第3回 SCFA濃度およびアンモニア態窒素濃度の測定

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、培養液中に含まれる微生物や発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン発酵について考えていきます。
3回目の実験では、短鎖脂肪酸(SCFA)とアンモニア態窒素濃度を測定し、飼料中の糖質が宿主動物のエネルギー源に変換されることを理解し、微生物タンパク質の合成に必要なアンモニアが生成されていることを確認しました。

今回の実験は動物機能栄養学研究室で行いました。みなさんTAの説明を真剣に聞いていますね。
SCFA濃度の測定にはガスクロマトグラフィーという機械を使用します。
栄養生理学実験ではマイクロピペットをよく使います。少しずつ慣れていきましょう。
アンモニア態窒素濃度の測定はフェノール系試薬を使用するので、ドラフト内での作業となります。TAによるお手本です。
マイクロプレートに分注していきます。アンモニア態窒素濃度も前回の酵素活性と同様に吸光度を測定して求めます。
最後にエクセルを使ってデータをまとめます。飼料条件による結果の違いはあったのでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はルーメン細菌からのDNA抽出とPCRを行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:新谷)

第4回 ルーメン細菌からのDNA抽出とPCR反応/電気泳動、PCR-DGGE

前半のヒツジ(ルーメン)編では、粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、それらの飼料がお腹の中でどのように分解・発酵されていくのかを見ていきます。
今回は、ヒツジの第一胃(ルーメン)で大事なはたらきをしているルーメン細菌叢がどのように変化しているのかを探る第一ステップとしてルーメン内容物からのDNA抽出とPCRを行いました。
その後、PCR-DGGE解析を行い、DNAレベルで細菌叢の違いを確認しました。

まずはルーメン内容物からのDNAを抽出し、その後PCRを行いました。
PCR反応が終わったサンプルをアガロースゲルにアプライしていきます。緊張しますが丁寧にできていました。
電気泳動の途中経過です。サンプルが移動しているのが分かりますね。
紫外線を当ててPCR反応が上手くいっているかチェックします。どの班もちゃんと増幅していたようです。
最後にPCR-DGGEを行います。ゲルはTAの力作です。きれいですね~。
先ほどのゲルへのアプライよりもさらに難しかったと思いますが、集中して上手にアプライできていました。はたして菌叢に違いは見られるでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。前半の実験も残りわずかとなってきました。
次回はルーメンから離れて、単胃動物であるラットの給与試験の準備としてラットの群分けを行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:新谷)

第5回 ラットの体重測定・群分け

後半のラット(単胃動物)編では、不溶性繊維もしくは水溶性繊維の精製飼料を給与したラットを用いて、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析しながら、食物繊維の効果について考えていきます。
5回目の実験では、5週齢のSDラット10個体を体重測定し、2群に分けました。
これから3週間、このラットたちをお世話していきます。

まずは小林先生による試験の目的と意義の説明です。どのような効果を期待できるのでしょうか?
ラットをポリビンに入れて体重測定を行います。入れるのに苦戦しています。
見分けがつくように、ラットの尻尾に番号を書いたシールを貼りました。しっかりつけないとラットがかじってとってしまいます。
3週間後にはどのくらい成長しているでしょうか。また、処理区間で違いはあるのでしょうか?
ラットの飼料を量り取ります。今回は試験区として新規の水溶性繊維、酢酸セルロース(CA)を用います。反芻動物では有用な結果が出ていますが、単胃動物でははたして・・・?

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はルーメン内の細菌をDGGEにより菌叢解析を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:今川)

第6回 Real‐time PCRによる繊維分解菌と可溶性糖類利用菌の定量

前半のウシ(ルーメン)編では、粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、それらの飼料がお腹の中でどのように分解・発酵されていくのかを見ていきます。
これまでの実験では、粗肥料と濃厚飼料のバランスを変えると、短鎖脂肪酸、アンモニア態窒素に違いが出ることを確認しました。これは、それぞれの飼料分解に関与するルーメン細菌の種類が異なるためです。
今回の実験では、ルーメン内で代表的な繊維分解菌、可溶性糖類利用菌および総細菌をReal‐time PCRにより定量し、それぞれの細菌種の動態をモニターしました。

小池先生か原理と方法の説明がありました。学生の見つめる眼は真剣そのもの。
まずマスターミックス(反応液)を作成します。作り終えてこの笑顔!
次にプレートに分注していきます。場所を間違えないように確かめながら…
こちらは分注に没頭中…
ピペット操作が重要な実験です!!
Real-time PCRはこちらの機械で測定します。結果はいかがでしょうか?
待ち時間で来週のプレゼンの話し合いをしています。今までの結果から、何か分かったのでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は前半の実験のまとめとして各班でプレゼンテーションを行った様子を、お伝えします。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:渡部)

第7回 プレゼンテーション

前半のヒツジ(反芻動物)編では、採取したルーメン液を採取した後、試験管内に粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、試験管内のルーメン液に含まれる微生物による飼料の分解・発酵の解析から、お腹の中の発酵について考えていきます。
今回は、前半のまとめとしてこれまで行ってきた実験の結果・考察を班ごとに発表してもらいました。

1番目は3班の発表でした。トップバッターでしたが、落ち着いた発表で予想、結果、考察がしっかり示されていました。
次は1班でした。ルーメン細菌の特性をよく調べて、結果と関連付けてまとめられていました。
3番目は4班でした。実験の結果から生産物のことまで考察がされていました。
4番目は2班でした。図や文字のデザイン・サイズに工夫がされており、見やすいスライドでした。
最後は5班でした。フローチャートを使って結論が分かりやすく示されていました。
最後に結果発表、そして小池先生、小林先生からプレゼンに対するコメントをいただきました。
どの班もよく調べてあり、おもしろい発表でした。
後半では先生からのアドバイスをもとに、さらにレベルアップした発表を期待しています!!

 

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回からは酢酸セルロース飼料がラット(単胃動物)に与える影響を見ていきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:新谷)

第8回 ラット諸器官計測、サンプル採取

ラットの給与試験では、3週間にわたり、毎日の採食量、飲水量を記録してきました。
今回は、そのラットから血液と盲腸内容物を採取します。
腑分けも行い、各臓器・組織重量、消化管内容物重を測定し、食物繊維による腸内環境への影響を検証します。

ラットの世話の様子です。毎日、当番の班を決めて
採食量と飲水量を記録してきました。
体重測定を行っています。
慣れた手つきでラットを扱っています。
はじめは、みんな少し緊張している様子でした。
班員で協力し、最後まで作業をやり遂げます!

今回の栄養生理学実験は以上です。
今後は採取したサンプルを分析し、水溶性および不溶性食物繊維が腸内環境に与える影響を検証していきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:金城)

第9回 ラットの血中グルコース・コレステロール濃度測定

後半のラット(単胃動物)編では、水溶性もしくは不溶性食物繊維を含む精製飼料を給与したラットを用いて、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析しながら、食物繊維の効果について考えていきます。
ラット解剖後初となる今回の実験では、心臓から採血した血液を用い、その中のグルコース・コレステロールの濃度を測ります。

今回の実験は作業自体はシンプルですが、ピペットの扱いがとても重要です。これまでの経験をいかして、やっていきましょう。
班員のみんなと協力して、入れる試薬や場所を間違えないようにマイクロプレートに分注していきます。
吸光度を測定する前に、ウェルに生じた泡をつまようじで潰します。
グルコース、コレステロールは健康の指標となりますが、飼料を変えることによる影響はどうなったでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は盲腸内容物に含まれる乳酸およびアンモニア態窒素濃度の測定を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:新谷)

第10回 アンモニア態窒素、乳酸、pHの測定

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、そのラットの盲腸内容物のアンモニア態窒素、乳酸、pHの測定し、飼料の違いが腸内フローラに与える影響を検証します。

まずは乳酸測定をします。前回に引き続き今回の実験もピペット操作が肝となります。とても慎重に取り組んでいます。
とても良い笑顔です。
O盛君です。カメラなんか見てないでしっかりと実験してください。
今回は乳酸の反応の待ち時間の間に、アンモニアの定量も行いました。体に害のある試薬があるため、ドラフト内で行っています。
機械を使って吸光度を測定します。前半でも同じ機械を使いましたが、やり方は覚えているでしょうか?
測定結果から検量線を作成し、乳酸およびアンモニア濃度を算出します。結果はどうだったのでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はラット盲腸内SCFA濃度測定および、嫌気性ロールチューブの作成です。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:今川)

第11回 ラット盲腸内SCFA濃度測定および、嫌気性ロールチューブの作成

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、ガスクロマトグラフィーを用いて盲腸内容物のSCFAを測定します。
また、嫌気的環境下における生菌数を測定するためにロールチューブの作成を行います。

まずは、SCFAの測定から始めます。前半のルーメン液の培養サンプルでも行いましたが、前回よりもスムーズにできたでしょうか?
SCFA測定の待ち時間の間に、小林先生から研究室の嫌気培養試験に使用するものの説明がありました。目的に合わせた手法の選択が大切ですね。
今回はサンプル中の生菌数を測定するために、嫌気性ロールチューブをつくります。総嫌気性細菌、Clostridium属細菌、ビフィズス菌を培養します。
ロールチューブマスターであるTA村住君からの説明後、実際につくります。上手くできるでしょうか?
数段階に希釈されたサンプル液を各細菌に適した培地に接種していきます。数が多いので班員の協力プレーが大切です。
チューブを氷水が入れてある装置に置き、回転させることで培地がチューブ表面に薄く固まっていきます。作成したチューブは培養後、次回の栄養生理学実験でコロニー数を計測します。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は今回作成したロールチューブのコロニー数測定と実験結果のまとめです。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:新谷)

第12回 ロールチューブのコロニー数測定

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、前回作成したロールチューブについて、出現したコロニーを計測します。
飼料のちがいは腸内細菌叢にどのような影響を与えたのでしょうか。
また今回が最後の実験です。小林先生から、これまでの結果についての考察のヒントを教えていただきました。

ロールチューブの培地に生えたコロニーを数えます。サインペンでマークしながら数えていきます。
集中して数えているので、今の彼には話しかけられません!
小林先生が今までの結果を見せながら、考察のポイントを説明しています。
なるほど、なるほど。
プレゼンの方向性について、どの班も真剣に話し合っています!

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は後半の最後、栄養生理学実験の最終回となります。
今までの実験で得られた結果をもとに、酢酸セルロースの効果について発表を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:金城)

第13回 プレゼンテーション

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回はいよいよ最終回、今までの実験結果・考察を班ごとにまとめて発表してもらいました。

発表前の光景です。
緊張感が高まっています。
トップバッターは4班でした。
スライドが綺麗な印象でよかったと思います。
次は2班。
予想を立てて、それに対して考察をしていました。
次は1班です。
目的・背景がしっかりしており、酢酸セルロースの構造から考察していました。
3班です。
肝臓重量の考察がしっかりしており、宿主の健康とつながりがありました。あと時間配分が完ぺきでした!
5班です。
5班のメンバーはほかの班に質問していました。
そのような姿勢は素晴らしいと思います!
最後に表彰がありました。
各班さまざまな考察がなされ、とても面白かったです!

今回の栄養生理学実験は以上です。
1ヶ月にわたる実験の内容を分かりやすくまとめて、かつ人に伝えるという作業は難しかったと思いますが、スライドの作り方や説明の仕方は格段に上手になっていました。
今後の研究室生活だけに限らず、どんな場所においてもプレゼン力は必要とされます。
ここで得た経験を忘れずに、これからも技術を磨いていってください!
実験、発表お疲れ様でした!
(担当:橋本)