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家畜栄養生理学実験 2008
2008年12月1日

第1回 ルーメン液のサンプリング、pH測定およびプロトゾア観察

本年度の栄養学実験では粗飼料と濃厚飼料を給餌した羊のルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
初回は、給餌前と給餌後1~4hで経時的にルーメン液をサンプリングし、pHを測定し、プロトゾアを観察しました。
これによって時間経過にともなうルーメン発酵の変化をマクロな視点で捉えることが目的です。

供試動物と飼料
ルーメン液を提供してくれたのは農場の羊たち4頭。
たもつ、てつし、ライリー、カレンです。
飼料はアルファルファ乾草1.3 kg、濃厚飼料0.2 kgを1日1回給与しました(12:30)。小池先生が手に持っているのがアルファルファ乾草。羊たちのおなかの中でどうなっていくのか…
まずはルーメン液のpHを測定。実験機器のほとんどは初めて使うもの。TAの説明を聞いて実際に測定してみます。値はどれぐらいで、時間経過とともにどのように推移したでしょうか?
小池先生も心配そうに後ろから覗き込みます。
次に顕微鏡をもちいてルーメン内の微生物のひとつであるプロトゾアを観察しました。スライドガラスにルーメン液をとり、カバガラスをかけると…
プロトゾアはルーメン内に生息する微生物の中でもっとも大きな生物です。種類によっては肉眼でも確認できるほど。小さなツブツブがそうかな?
サンプリング直後のプロトゾアはまだ元気に動き回っているので顕微鏡で実際にその動きを見るのはなかなか楽しいです。
ここから数枚は顕微鏡を覗き込む3年生の様子をどうぞ。

初めて体験するルーメンの世界。3年生はそれぞれどんな感想を持ったでしょうか?
今回は後半の実験で計数するためにプロトゾアの固定も行いました。ホルマリンで細胞を固定し、メチルグリーンで核を染色します。
マイクロピペットでルーメン液を測りとります。正確な実験データを得るにはピペッティングはとても重要です。今後の実験でもとても重要になってきます。
最後にルーメンのもつ炭水化物を分解する力を目で見て確認するために培地を使った実験をおこないました。培地中には炭素源としてろ紙(セルロース)とお米(デンプン)が入っています。ここにルーメン液を接種すれば細菌の作用によってそれぞれの基質が分解されるはずです!
チューブの中を嫌気性に保つためにルーメン液の接種はシリンジで行います。初めてではなかなか難しいこの作業、3年生もTAの指導のもと実際にやってみます。うまく分解されるかどうか楽しみです。

 

 

いよいよ始まりました家畜栄養学実験。
第1回は、実際にルーメン微生物を肌で感じるために、顕微鏡で観察しました。
第2回はルーメンの糖質分解活性がどのぐらいあるのか数値化して測定します。

第2回 糖質分解酵素の活性測定

本年度の栄養学実験では粗飼料と濃厚飼料を給餌した羊のルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
今回は、ルーメン液のセルラーゼおよびアミラーゼ活性を測定することで、ルーメン内で粗飼料および濃厚飼料が分解されることを実証することが目的です。

今回からは5Fの実験室に場所を移します。
回測定するセルラーゼとアミラーゼは、粗飼料の主成分であるセルロースと濃厚飼料の主成分であるデンプンにそれぞれ作用します。
前回の培地での実験。お米(デンプン)はどろどろに、ろ紙(セルロース)はへにゃへにゃになっていました。これらの基質の分解酵素の活性を数値化するとどれくらいになるのでしょう??
培養後の培地からガスが出ているかどうかをシリンジで確かめます。お米を入れた培地と、ろ紙を入れた培地とでは、ガスの臭いも違いました。
各班試験管を41本用います。
番号を間違えないように・・・
各班の代表者の唾液の酵素活性も測ります。
もちろんマイクロピペットの操作が命です。
反応後は100℃で加熱します。

吸光度を測定後、エクセルでデータ処理をします。
うまく検量線はひけたでしょうか?
エクセルの扱いにもどんどん慣れていってください!

給餌後の酵素活性はどのように変化していったでしょうか??
ルーメン内で一体何が起こっているのか、考察を深めていきましょう。

 

 

前半の家畜栄養学実験は発表も含め残り3回となりました。
第3回はアンモニア態窒素濃度の測定を行います。

第3回 アンモニア態窒素濃度の測定

本年度の栄養学実験では粗飼料と濃厚飼料を給餌した羊のルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
今回はルーメン液中のアンモニア態窒素濃度の経時変化を調べることで、ルーメン内でのタンパク質利用について考えます。

飼料中のタンパク質はルーメン微生物によって分解され、アンモニアが生じます。そしてアンモニアを材料に微生物タンパクが合成され、これが宿主動物のタンパク源となります。
実験開始 まずは検量線用の反応液を分注していきます。 今回もピペット操作が命です!!

発色反応にはフェノール試薬(劇・毒物)を用いるので、作業はドラフト内で行いました。

反応の待ち時間にエクセルの使い方講習・・・
みんなエクセルの優れた機能に驚くばかりです!
反応終了後 こちらは4班が吸光度を計測中。
実験室に戻ってデータ解析。 先程のエクセルスキルは活かされましたか??
最後に全班のデータをまとめました。 ところが、、、0H(2班)のデータがない!!?
不運にも検量線がうまく書けなかったということでやり直しですmm  今回初TAの鈴木君が見守ります!
しっかりデータが取れたようで一安心。 2班の皆さんお疲れ様です。
最後にごほうび?のケーエフシー!! たまには居残りもいいものですね。笑

早いもので前半の家畜栄養学実験も残り2回!
次回はプロトゾアの計数とVFA濃度の測定です。
頑張っていきましょう。

第4回 プロトゾア計数と揮発性脂肪酸(VFA)濃度の測定

本年度の栄養学実験では粗飼料と濃厚飼料を給餌した羊のルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
今回は、エネルギー源となるVFAの産生量、およびVFAである酢酸、プロピオン酸、酪酸の割合が給餌後の時間経過に伴いどのように変化するかを調べます。
また、VFA生産に関わるプロトゾアを計数し、ルーメン微生物とVFA生産の関係を明らかにすることを目的としています。

まずはプロトゾアの計数からです。 10μl中にいるプロトゾアを全て数えます。
結構疲れる作業ですが、黙々と数えていきます。

みなさん真剣!
顕微鏡を覗くと、このようにプロトゾアが見えます。 これらのプロトゾアが宿主のエネルギー生産の手助けをしています。 プロトゾアの力、すごいです!!
続いてガスクロマトグラフィー(ガスクロ)を用いてVFAの測定です。こちらの機械を使います。
まずガスクロに注入するサンプルの準備をします。
シリンジでサンプルを吸います。
サンプルを慎重に機械に注入します。
データが紙に印刷されて出てきます。
得られたデータをパソコンで解析します。 Excelに苦戦しながらも、みなさん結果をまとめていました。

前半の実験もいよいよ残すところあと1回となりました。
そろそろ発表会に向けて準備をし始める班もあるのでしょうか?
次回はルーメン内のDNA分解酵素活性の測定です。

第5回 ルーメン内のDNA分解酵素活性モニタリング

ルーメン内は多様な微生物が複雑かつ安定な生態系を形成しており、給与飼料の変化などの環境変化に対応し優れた消化機能を発揮している。また、外部から侵入する微生物やDNAは速やかに駆逐される。今回は安定な微生物系を保障するDNA分解酵素活性について視覚的に体験することが目的です。

まずはDNA溶液とルーメン液を混合
それを37℃で30秒~30分インキュベーションします。ルーメン液と混合することでDNAはどのくらいの時間で分解されるのか?
待ち時間に電気泳動の準備。ゲルに使うアガロースを量り
電子レンジで溶かします
最後にエチブロを入れればゲル溶液の完成ですが・・・
今回電気泳動に使用するエチブロは発癌性の物質なので扱うときは手袋をつけます。
ゲルが完成したところで反応が終わったDNA溶液を流します。
サンプルをウェルに入れるときは集中力が必要です。真剣な3年生&見守るTA
その2
その3
30~40分程で泳動終了です。
最後にゲルにUVをあてて撮影。最初ははっきり見えるバンドがルーメン液と混合し30秒インキュベーションすればかなり薄くなり、1分では全く見えなくなってしまいます。

さて家畜栄養学実験の前半も最後のプレゼンを残すのみとなりました!
これまでの実験データを皆さんはどのようにまとめたのでしょうか。
その様子は近日中にお送りしたいと思います!
ではでは

最終回 プレゼンテーション 発表会

本年度の栄養学実験では、粗飼料と濃厚飼料を給餌した羊のルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べるために、
ルーメン内容物のpH測定およびプロトゾア観察、糖質分解酵素の活性測定、アンモニア窒素濃度の測定、プロトゾア計数と揮発性脂肪酸(VFA)濃度の測定、およびルーメン内のDNA分解酵素活性の測定を行いました。
今回は、これまでの行ってきた実験のまとめとして各班に実験の結果、考察についての発表してもらいました。

トップバッターは3班です。
アニメーションを駆使してルーメン内の反応について説明していました。
続いて1班の発表です。
4頭いる羊の特徴に注目して、2頭ずつに分けて結果、考察を説明していました。
続いて2班のみなさんです。
スライドをキレイに見やすくまとめていました。
次は4班の発表です。スライドの表紙からしてハイセンスです!

最後は5班の発表です。
手書きの図をスライドに入れるという高度な技(?)を使っていました。
今回の発表会では実験のTAをやっていた4人が審査員となり、それぞれの班の発表を評価しました。 優勝した3班には素敵な商品が!。
他の班にはカントリーマームです。
最後に小林先生から総評をいただきました。
ここからは実験の打ち上げの模様をお伝えします。 実験の指導をされていた小池先生に乾杯の音頭をとっていただきました。
みなさん楽しそうなご様子。
参加してくれた4年生に一言ずつ感想を言ってもらいました。

いかがでしたでしょうか?
今回で前半の実験が終了しました。
発表の準備はとても大変だったと思いますが、みなさんしっかり取り組んでいました。この調子で後半の実験も頑張ってください!