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家畜栄養生理学実験 2010
2010年12月1日

第1回 ルーメン液のサンプリング、pH測定およびプロトゾア観察

前半のヒツジ(ルーメン)編では、粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、それらの飼料がお腹の中でどのように分解・発酵されていくのかを見ていきます。初回の実験では各ヒツジからルーメン液を採取し、pHを測定し、微生物の一種であるプロトゾアを観察しました。
なお、サンプリングは飼料摂取前後の変化を見るため、給餌前、給餌後1時間、2時間、3時間、4時間と5回に分けて行いました。

まずは全体の流れの説明です。今回の実験の目的をしっかりチェック。
給餌前の飼料がどんなものかも見ておきます。匂いも確認。
サンプリングをした後はまずpHを測定。粗飼料多給固体と濃厚飼料多給固体でpHは違うでしょうか?今回はかなり違いが見られたようです。なぜこんなに違うか考えることがとても大切です。
新鮮なルーメン液には活発に動くプロトゾアがたくさんいます。大きいもの、小さいもの、繊毛の生え方にも様々あることが確認できました。
TAもサポートします。「ここに見えいてるのが全毛虫だよ!」という具合に。
後日の実験のためにプロトゾアの固定も行いました。固定液とルーメン液を一定の割合で混合します。ピペッティングは今後の実験でも欠かせないスキルです。
中には動いているプロトゾアに大興奮!な班も。
なかなか良いリアクションですね。(笑)
最後にルーメン液を濾紙入り培地と米入り培地に摂取してもらいました。この結果は次回ご紹介します!

これからは今回サンプリングしたルーメン液を用いて、様々な分析を行っていきます。
次回もお楽しみに!
(担当:福間)

第2回 糖質分解酵素の活性測定

前回のサンプリングの合間に、ルーメン液を摂取したお米(デンプン)入り培地と濾紙(セルロース)入り培地です。
左:ルーメン液を摂取したもの
右:無処理
1週間でどちらもボロボロに分解されました。
分解の過程で発生したガスの臭いを嗅いでみます。
かなり臭いです。
今回測定するアミラーゼは濃厚飼料の主成分であるデンプンに、セルラーゼは粗飼料の主成分であるセルロースに作用する酵素です。
ここから実験開始です。
この実験はピペッティングが重要です!サンプルおよび試薬を正確に試験管に分注していきます。
効率よく実験を進めるにはチームプレーは欠かせません。
もちろんTAもしっかりサポートします。上の写真はミスがないか目を光らせるM1吉國君(右)です。
培養後、呈色させた反応液をマイクロプレートに分注します。
これを用いて吸光度を測定します。
吸光度から反応量=酵素活性を算出します。
Excelを用いて計算を進めます。
給餌後、酵素活性は濃厚飼料多給時と粗飼料多給時でどのように推移したでしょうか?
考察を深めていきましょう。

今回の栄養生理学実験は以上です。
来週はアンモニア態窒素濃度の測定を行います。
次回もお楽しみに!
(担当:林)

第3回 アンモニア態窒素濃度の測定

本年度の栄養生理学実験、前半では粗飼料多給条件および濃厚飼料多給条件のヒツジのルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
今回はルーメン液のアンモニア態窒素濃度を測定することで、微生物タンパク質の合成に十分な量のアンモニアが存在することを確認します。そして、その経時変化を調べることでルーメン内でのタンパク質利用(タンパク質が分解された後、どのように利用されるか?)について考えます。

まずは小池先生から実験の原理が説明されます。
反芻動物のタンパク質分解・利用は、ヒトをはじめ単胃動物とは異なります。
それでは実験開始です。
まずは、ルーメン液を遠心分離して上清だけ利用します。
今回の実験もピペッティングが命です!
ルーメン液の希釈、希釈液や試薬の分注など、正確さが求められます。
班でのチームプレーもスムーズになってきたでしょうか?
フェノール系の試薬はドラフト内で操作します。
フェノール混合試薬、次亜塩素酸を分注したら、しばし発色(青色に変化する)を待ちます。
発色が完了したら、マイクロプレートに分注していきます。
この作業もドラフト内。
こちらがマイクロプレートリーダーで吸光度を測定している画面です。(赤に近いほど、よく発色している=アンモニア濃度が高いことを示します)
検量線を作成し、得られた式を用いてルーメン中のアンモニア態窒素濃度を算出します。
先週に続いての検量線の作成なので、だいぶ慣れてきたでしょうか?
さぁ、全班の結果を見比べるとルーメン内でのタンパク質分解を経時的が濃厚飼料多給時と粗飼料多給時でどのような違いがみられるでしょうか。
考察を深めていきましょう。

 

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はSCFA濃度測定とプロトゾア計数を行います。
次回もお楽しみに!
(担当:林)

第4回 プロトゾア計数と短鎖脂肪酸 (SCFA) 濃度の測定

・・・この回は写真を撮り忘れたためありません。すみません。

第5回 ルーメン細菌からのDNA抽出、RFLPによる菌叢解析

本年度の栄養生理学実験の様子をお伝えします。
前半では粗飼料多給条件および濃厚飼料多給条件のヒツジのルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
今回はルーメンサンプル中に存在する遺伝子が、粗飼料多給区と濃厚飼料多給区で違いがあるかを確認します。
さらに経時変化を調べることでルーメン内での菌叢変化について考えます。

まずは小池先生から実験の原理が説明されます。
その後ルーメン細菌からDNAを抽出しました。
抽出したDNAに制限酵素を加えて37℃で2時間消化させます。
それでは待ち時間の間に電気泳動の準備をしましょう。
まずは、泳動用のアガロースゲルを作ります。
アガーとバッファーを混ぜて・・・
次に電子レンジでアガーを溶かします。
沸騰させすぎて水分を飛ばさないようにすることがポイント!
サンプルとゲルが完成したらゲルにサンプルをアプライしていきます。
ゲルの写真を撮ると粗飼料多給区が濃厚飼料多給区よりバンドの数が多く、菌叢が複雑であることがわかりました。
最後に、班ごとに基質とイノキュラムに好きなものを入れて培養したチューブの様子を見てみましょう。
においをかいでみんな笑顔!
1班ではソーセージの人工ケージを基質として用いていました。細かくしたケージはルーメン細菌により少し分解されましたね。
細菌の発酵能力にみんな驚いた様です。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はラットの体重測定・群分けを行います。
次回もお楽しみに!
(担当:さかき)

プレゼンテーション(前半)

本年度の栄養生理学実験の様子をお伝えします。
前半では粗飼料多給条件および濃厚飼料多給条件のヒツジのルーメン内発酵が時間経過とともにどのように変化するかを調べます。
これまでの実験で給与飼料の違いによりルーメン内の発酵パターンが変化することを確認してきました。また、なぜ変化が起きているのか、ルーメン内の微生物に着目して数・多様性・酵素活性を明らかにしてきました。
今回は前半のまとめとして、これまで行ってきた実験の結果・考察を班ごとに発表してもらいました。

発表前の様子です。
どの班も最終チェックとしてスライドや参考文献の見直しに余念がありません。
トップバッターは3班です。
反芻家畜の唾液の緩衝作用について述べたスライドです。
要点をとらえたスライド作りと発表ができていました。
2番手は5班です。
非常にインパクトのあるスライドです。スライドに皆の心をひきつけるような工夫がされていました。
続いて4班です。
全体の流れを示したスライドですが、こういったスライドがあると発表が分かりやすいですよね。
続いて2班です。
RFLPの結果を示したスライドです。粗飼料多給と濃厚飼料多給で結果が異なっているのがよく分かりますね。
最後は1班です。
粗飼料多給と濃厚飼料多給でそれぞれ何が異なるかを表にしてまとめていました。見やすくて分かりやすい表だと思います。
時には鋭い質問が来て、とまどうことも。
今回のプレゼンは、TAが審査員として各班の発表を評価し、採点しました。
優勝したのは・・・・・・・・・・1班でした。おめでとうございます!
3位以上の班には素敵な景品が小池先生より送られました。
写真は3位の5班です。
発表後、小林先生から各班の発表に対するコメントをいただきました。
最後に、小池先生より発表の総評と今回の前半部分のまとめをしていただきました。

第6回 ラットの群分け&サンプリング

本年度の栄養生理学実験、後半ではオリゴ糖が単胃動物の健康および栄養に及ぼす影響について考えます。
オリゴ糖を含有する水を飲水させたラットの臓器、血液および大腸内容物を主な材料にして、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析していきます。
初回は2週間のラットの飼育とサンプリングの様子をご紹介します。

ラットはこのようなケージに飼って飼育します。
こんなに大きいペレットも食べてしまうなんて驚きです。
採食量と飲水量は毎日測定します。
連携プレーの見せどころですね。
こちらは対照区のラットです。
オリゴ糖区をうらやましがっているかもしれませんね。
一方、こっちはオリゴ糖を給与しているラットです。
外見に違いはないようですが、体の中はどうなってるんでしょうか?
TAの指導のもとサンプリングをしています。
慣れない作業ですが、みんな一生懸命行っていました。
体重に大きな差は見られませんでしたが、盲腸内容物重でオリゴ糖給与による増加が見られました。発酵産物や菌叢にも期待大です!
最後に小林先生によるまとめと今後の期待について説明がありました。
ひとまず変化が見られてホッとひと安心です。

 

今回の栄養生理学実験は以上です。3年生のみなさん、2週間のラットのお世話お疲れ様でした。
次からは今回サンプリングした血液と盲腸内容物の分析に入ります。
まずはじめは、血清成分(グルコース&コレステロール)の測定です。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:澤田)

第7回 血清成分の分析

本年度の栄養生理学実験、後半ではオリゴ糖が単胃動物の健康および栄養に及ぼす影響について考えます。
オリゴ糖を含有する水を飲水させたラットの臓器、血液および大腸内容物を主な材料にして、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析していきます。
今回は測定キットを使って前回サンプリングした血液中のグルコースとコレステロール濃度を測ります。

今回の実験は比色定量ということで、ピペッティング操作が重要になってきます。まずは、操作方法について確認です。
検量線の大事さを実感してもらうため、R2乗値を競う選手権が開かれました。優勝班には景品が与えられるとあって、準備も入念です。
細かい作業ですが、どの実験にも必要な基本操作です。
今のうちにしっかり習得出来るといいですね!
こちらは1班。真剣な眼差しが光ります。
榊さんと吉國くんが学会で不在のため、4年生2人が代理でTAをしてくれました。新居くんの熱心な指導が入ります。
梅村くんも 先輩としてしっかりした姿が見せられたのではないでしょうか?
測定した吸光度を元に濃度を算出します。
分析結果をまとめるのも実験の大事な行程です。
検量線選手権に優勝した5班には景品が送られました。
ちなみに5班はグルコース部門・コレステロール部門のダブル優勝でした。
優秀です!その調子で頑張って!

今回の栄養生理学実験は以上です。残念ながら、血液成分にオリゴ糖給与による影響は見られませんでした。
血液成分にまで効果が表れるには、飼育期間が短かったのかもしれません。
次からは重量に違いが見られた盲腸内容物の分析とあって効果が期待できます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:澤田)

第8回 アンモニア態窒素濃度の測定

・・・またもや写真を撮り忘れてしまいましたのでお休みとさせていただきますm(_ _)m

第10回 SCFAの定量および嫌気性ロールチューブ法による腸内細菌の培養計数

本年度の栄養生理学実験、後半ではオリゴ糖が単胃動物の健康および栄養に及ぼす影響について考えます。
オリゴ糖を含有する水を飲水させたラットの臓器、血液および大腸内容物を主な材料にして、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析していきます。
今回は盲腸内容物を用いて、SCFAのガスクロマトグラフ定量と総細菌、Clostridiaおよびcoliformsの培養計数を行いました。
オリゴ糖によって総細菌の数が増えSCFAも増える一方、Clostridiaおよびcoliformsといった悪玉菌は減ることを期待しています。

TAが盲腸内容物を希釈液で102~108倍に希釈してロールチューブ用のサンプルは準備完了!
早く3年生来ないかな~。
最初に小林先生からロールチューブ法の説明がありました。
チューブの周りに薄くアガーを巻くなんて画期的なアイディアですよね。
細菌の希釈サンプルをシリンジで0.2ml 取ります。
空気が入ってしまうので、ちょっと多めに入れて→
その後空気を抜いてぴったり0.2mlにします。
そして選択培地に接種します。4つの希釈段階と3種類の選択培地があるので間違えないように注意して。
サンプルを接種した培地は、氷の上に置いて冷やしながらチューブの表面にアガーを巻いていきます。
うまく巻けたかな?コロニーがちゃんと生えるか来週が楽しみですね。
一方SCFAのガスクロ定量です。
サンプルを1ul吸って
機械にセット。ガスクロを扱うのは2回目なのでもう測定方法は大丈夫ですね。
結果が出たら、データをまとめましょう。
期待通りのデータは得られましたか? 予想もしない結果がでることもありますがそれが生物を扱う実験の奥深さですね。

 

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はロールチューブ計数およびrt-PCRを行います。
次回もお楽しみに!
(担当:さかき)

第11回 ロールチューブ法およびReal-time PCR法による腸内細菌の定量

本年度の栄養生理学実験、後半ではオリゴ糖が単胃動物の健康および栄養に及ぼす影響について考えます。
オリゴ糖を含有する水を飲水させたラットの臓器、血液および大腸内容物を主な材料にして、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析していきます。
これまでの実験でオリゴ糖添加することで盲腸内容物重の増加や発酵パターンが変化することを確認してきました。これらは、オリゴ糖添加により腸内に生息する微生物の構成が変化したことに起因するものと考えられます。
今回は2つの方法で腸内に生息する細菌を定量し、オリゴ糖添加による腸内細菌叢変化に関する理解を深めることが目的です。

1, ロールチューブ法による総細菌、Clostridium 属細菌およびColiforms の定量

前回の実験では培地を作製し、10倍希釈系列の盲腸内容物を培地に接種しました。
37℃で2日間培養するとコロニーができてくるので、それを1つずつ正確に数えていきます。

コロニーかごみか分からないものはTAに確認してもらいます。

自分たちで作製したロールチューブに生えてきたコロニーを見てにんまり
皆真剣に数えています。
各細菌数を数え終わったら、データをまとめて、黒板に記します。
全班のデータから何が言えるでしょうか。
2, Real-time PCR法による盲腸内総細菌およびLactobacillus 属細菌の定量

ロールチューブの細菌計数と平行して、培養を行うことなく細菌の定量をすることができるReal-time PCR法による定量を行いました。

小林先生にReal-time PCR法の原理の説明をしていただいた後、実際に測定する機械の前でどのようにして測定するかをTAに説明してもらいます。
原理については理解できたでしょうか?
うまくいけばこのような増幅曲線が得られてきます。
実際にサンプルを添加して測定してみます。
写真はTAより、クリーンベンチ内での操作を学んでいるところです。
クリーンベンチでの操作は慎重に行います。
操作で分からないところはTAに聞いてみます。

今回の栄養生理学実験は以上です。Real-time PCR法による結果ではオリゴ糖添加により菌叢が大きく変化したことが分かったと思います。
今回の結果はこれまでの結果とあわせて考えるとどのようなことがいえるでしょうか?
来週はいよいよ後半のプレゼン発表です!
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:吉國)

プレゼンテーション(後半)

本年度の栄養生理学実験、後半ではオリゴ糖が単胃動物の健康および栄養に及ぼす影響について考えます。
オリゴ糖を含有する水を飲水させたラットの臓器、血液および大腸内容物を主な材料にして、
健康と栄養状態を表す一連の指標を分析していきます。
これまでの実験で給与飼料の違いにより、血中成分や腸内発酵パターンおよび腸内菌叢が異なることを確認してきました。
今回は後半のまとめとして、これまで行ってきた実験について班ごとに考察し、発表してもらいました。

トップバッターは5班です。
今回の実験の背景にある腸内フローラコントロールについて、具体的に菌種名もあげながら丁寧に説明してくれていました。
ストーリー仕立ての発表で面白かったです。
続いて3班です。
仮説とは異なる結果についても、考察してくれていました。
順を追って説明したのでわかりやすかったです。
3番目は1班です。
今回の実験におけるフローチャートを、アニメーション付きのスキームで説明してくれました。会場から歓声があがりました。 要所要所にまとめがあり、聴く人への配慮を感じました。
そして4班です。
腸内細菌つながりで、今ホットなニュースも発表してくれました。
スライドも統一感があり、しっかり勉強してきたことが伝わってきました。
最後は2班です。
自分達なりの仮説を立てて説明していて面白かったです。小林先生もうならせる仮説でした。スキーム等を用いた説明だと、もっとわかりやすくなったように感じました。
前半のプレゼン同様、今回もTAによる審査が行われました。
見事優勝に輝いたのは、4班です!
おめでとうございます☆
2位は、1班です。
そして、3位に選ばれたのは5班です。
発表会終了後、夕方からおなじみの「義経」にて打ち上げを行いました。
いつもありがとうございます。
3年生に一言ずつ感想を話してもらっている様子です。

 

みなさん、発表・準備お疲れ様でした。
いろいろコメントしてきましたが、どの班も個性豊かな発表でとても楽しかったです。
今後研究室に配属されるとプレゼンの機会も増えると思うので、どんどん技術を磨いていってください。

今年度の栄養生理学実験は以上です。
前半はヒツジ(反芻動物)、後半はラット(単胃動物)を用いてさまざまな実験を行ってきました。
3年生はどのようなことを感じたのでしょうか。
研究室分属も近づいていますが、どの研究室にいってもこの実験の経験が生きれば幸いです。
来年もお楽しみに!
(担当:すう)