ニュース

家畜栄養生理学実験 2015
2015年12月1日

この授業では、前半はヒツジ(反芻動物)、後半はラット(単胃動物)を用いて、動物が摂取した飼料がお腹の中でどう代謝されていくのかを考えます。
慣れない実験に戸惑いながらも、がんばる初々しい3年生の模様をお伝えします。

第1回 ルーメン内容物サンプリング、pH測定およびプロトゾア観察

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、培養液中に含まれる微生物や発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン発酵について考えていきます。
初回の実験ではヒツジからルーメン液を採取し、pHを測定、微生物の一種であるプロトゾアを観察しました。

採取したルーメン液をピペットで試験管に移していきます。飲み込まないように気を付けて!
こちらはルーメン液のpH測定の様子です。どんな値になったでしょうか?
最後にルーメン液中のプロトゾアを観察します。スライドグラスにルーメン液をとっていざ観察。
たくさん毛が生えたものや、一本しか毛がないもの。プロトゾアの動き回る姿は観察できたかな?

来週は粗飼料多給区、濃厚飼料多給区それぞれの糖質分解酵素の活性を見ていきます。
実験の基礎であるピペッティングを実践するとともに、酵素による飼料の分解について調べていきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:岸)

第2回 糖質分解酵素の活性測定

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、培養液中に含まれる微生物や発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン発酵について考えていきます。
2回目の実験ではin vitro培養サンプルの糖質分解酵素(アミラーゼ・セルラーゼ)の活性を測定し、粗飼料多給条件および濃厚飼料多給条件でこれらの酵素活性がどのように異なるのかを確認しました。

TAから実験の説明を聞く3年生たち。いつもはちょっぴりやんちゃな学生も、上野さんの前では真面目に話を聞いています。
糖質分解酵素の至適温度はだいたい動物の体温と同じくらい。この状態で1時間おいて、酵素で基質を分解させます。
今回の実験ではマイクロピペットを多用します。ピペット操作もさることながら、どこに何を入れたか記録するなど、班内での連携も試されます。
最終的に発色したものがこれ。酵素で分解された糖質が多いほど、色が濃くなります。これらの吸光度を測定し、酵素活性を測ります。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はSCFA濃度、アンモニア態窒素濃度の測定を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:岸)

第3回 SCFA濃度およびアンモニア態窒素濃度の測定

前半のヒツジ(反芻動物)編では、ルーメン液を採取した後、粗飼料多給と濃厚飼料多給を模した条件で培養し、培養液中に含まれる微生物や発酵産物の解析から、反芻動物のルーメン発酵について考えていきます。
3回目の実験では、短鎖脂肪酸(SCFA)とアンモニア態窒素濃度を測定し、飼料中の糖質が宿主動物のエネルギー源に変換されることを理解し、微生物タンパク質の合成に必要なアンモニアが生成されていることを確認しました。

今回の実験は家畜栄養学研究室で行いました。大勢の学生で実験室はごった返していました。
アンモニア態窒素の測定には危険な試薬を使います。TAの説明はちゃんと聞いておいてね。
この実験はピペット操作が命。ピペットの目盛りを合わせ、試薬をちゃんと吸えているか確認するなど、正確な操作が要求されます。
フェノール試薬はドラフト内で扱います。異なる2つの試薬を連続して加えなければならないため、2人の連携能力が成功の鍵となります。
こちらはSCFA測定の様子。TAがお手本をやるのを、みんな真剣に見ています。
TAからの指導でシリンジを機械に差し込みます。上手くできるかな?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はルーメン細菌からのDNA抽出とPCR、電気泳動を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:岸)

第4回 ルーメン細菌からのDNA抽出とPCR反応

前半のヒツジ(ルーメン)編では、粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、それらの飼料がお腹の中でどのように分解・発酵されていくのかを見ていきます。
今回は、ヒツジの第一胃(ルーメン)で大事なはたらきをしているルーメン細菌の叢がどのように変化しているのかを探る第一ステップとしてルーメン内容物からのDNA抽出とPCRを行いました。

まずはルーメン内容物からのDNA抽出を行います。
ピペット作業にも大分慣れてきたでしょうか。
PCR反応に用いるマスターミックスを作っています。
試薬の入れ忘れがないか確認しながら作業していますね。
PCRチューブにマスターミックスとサンプルを分注し終えて、機械に設置しています。
反応に適した温度条件、サイクル数で行うことが重要です。
PCR反応の待ち時間の間に電気泳動のゲルを作成します。
危険な試薬を扱うため、手袋をつけての作業となります。
電子レンジで温めたゲルが冷めないうちにゲルを型に流し込みます。
PCR反応が終わったサンプルを泳動槽にアプライしています。上手くできたでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はルーメンから離れて、単胃動物であるラットの給与試験の準備としてラットの群分けを行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第5回 ラットの体重測定・群分け

後半のラット(単胃動物)編では、不溶性繊維もしくは水溶性繊維の精製飼料を給与したラットを用いて、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析しながら、食物繊維の効果について考えていきます。
5回目の実験では、5週齢のSDラット10個体を体重測定し、2群に分けました。
これから3週間、このラットたちをお世話していきます。

昨年開発された「いまがわ式」を披露しています!
来年からも採用されるといいですね。
ラットをポリビンに入れて体重測定を行います。
見分けがつくように、ラットの尻尾に番号を書いたシールを貼りました。
3週間後にはどのくらい成長しているでしょうか。
ラットの飼料を量り取ります。今回は試験区として新規の水溶性繊維を用います。どのような結果が出るのか期待大ですね!
メスシリンダーで水を量っています。
ラットの飲水量、採食量も大事なデータです。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はルーメン内の細菌をリアルタイムPCRを用いて定量し、菌叢解析を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第6回 Real‐time PCRによる繊維分解菌と可溶性糖類利用菌の定量

前半のヒツジ(ルーメン)編では、粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、それらの飼料がお腹の中でどのように分解・発酵されていくのかを見ていきます。
これまでの実験では、粗肥料と濃厚飼料のバランスを変えると、短鎖脂肪酸、アンモニア態窒素に違いが出ることを確認しました。これは、それぞれの飼料分解に関与するルーメン細菌の種類が異なるためです。
今回の実験では、ルーメン内で代表的な繊維分解菌、可溶性糖類利用菌および総細菌をReal‐time PCRにより定量し、それぞれの細菌種の動態をモニターしました。

TAがスタンダード分注のお手本を見せているところです。
分注するウェルを間違えないように、確認しながらの作業が必要となります。
分注が終わったプレートをLight Cyclerという機械に設置しています。
TAの指導の下、総細菌に占める各細菌の割合を算出しています。
各班の計算結果をホワイトボードに書きます。
全班のデータが出そろいました。
粗飼料区、濃厚飼料区間に有意差は見られるのでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は前半の実験のまとめとして各班でプレゼンテーションを行った様子を、お伝えします。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第7回 プレゼンテーション

前半のヒツジ(ルーメン)編では、採取したルーメン液を採取した後、試験管内に粗飼料を多給した区と濃厚飼料を多給した区を設定し、試験管内のルーメン液に含まれる微生物による飼料の分解・発酵の解析から、お腹の中の発酵について考えていきます。
今回は、前半のまとめとしてこれまで行ってきた実験の結果・考察を班ごとに発表してもらいました。

トップバッターは5班の発表でした。
しっかりと発表の準備をしてきたことが伝わる良い発表でした。
次は2班の発表です。
ハキハキとしたしゃべり方で、端的にまとめられていました。質疑応答の時間が印象的でした。
3番目は1班です。
結果が分かりやすくグラフにまとめられていました。
スライドは色やイラストを効果的に用いて作られていました。
4番目は3班です。
方法を原理から説明していた点が印象的でした。
ラストは4班でした。イントロの掴みがとてもよかったと思います。
粗飼料と濃厚飼料をバランスよく給与することが大事だという格言が出ました!

 

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回からは水溶性もしくは不溶性の食物繊維がラット(単胃動物)に与える影響を見ていきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:上野)

第8回 ラット諸器官計測、サンプル採取

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、そのラットから血液と盲腸内容物を採取します。
さらに、腑分けも行い、各臓器・組織重量、消化管内容物重を測定し、飼料による腸内環境への影響を検証します。

3週間の給与試験でどのくらい成長したのでしょうか。
まずは体重測定を行います。
皆さん慣れた手つきでラットをポリビンの中に誘導していました。
顔をのぞかせています。
作業を始める前に、流れを確認することは大事ですね。
班員で協力して作業を進めていきます。
血液、盲腸内容物をサンプリングし、各組織の重量データもしっかり記録することができました。

今回の栄養生理学実験は以上です。
今後は採取したサンプルを分析し、水溶性および不溶性食物繊維が腸内環境に与える影響をいろいろな角度から検証していきます。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第9回 ラットの血中グルコース・コレステロール濃度測定

後半のラット(単胃動物)編では、水溶性もしくは不溶性食物繊維を含む精製飼料を給与したラットを用いて、健康と栄養状態を表す一連の指標を分析しながら、食物繊維の効果について考えていきます。
ラット解剖後初となる今回の実験では、心臓から採血した血液を用い、その中のグルコース・コレステロールの濃度を測ります。

血清グルコース・コレステロールはヒトの健康診断でも使われる重要な指標です。どちらの群がより健康になったのでしょうか?
今回の実験はとにかくピペッティングが命!与えられた試薬を、入れる位置を間違えないようウェルに加えていきます。
多くの穴を見つめていると、どうしてもどこに入れたか分からなくなってしまうもの。班員と協力して慎重に実験を進めていきます。
こちらはウェルに生じた泡を潰している様子。つまようじで泡の表面めがけてプスリ。どうしても潰れない泡には二刀流で立ち向かいます。
吸光度を測ったらそれをエクセルで計算します。検量線はうまくひけたかな?
全班分の結果が揃ったところで先生からの総括です。さて結果はどうだったでしょうか?

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は盲腸内容物に含まれる乳酸およびアンモニア態窒素濃度の測定を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:岸)

第10回 アンモニア態窒素、乳酸、pHの測定

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。今回は、そのラットの盲腸内容物のアンモニア態窒素、乳酸、pHの測定し、飼料の違いが腸内フローラに与える影響を検証します。

前回に引き続き今回の実験もピペット操作が肝となります。班のメンバーと協力できるかが成功のカギとなります。
カメラを向けられると人はついピースしてしまうもの。それにも動じず黙々と実験に勤しむその集中力、是非とも見習いたいものです。
乳酸の測定は小さい容量のマイクロピペットを多用します。ちゃんと吸えているか、アプライする場所、そしてピペッティング、一時も気が休まりません。
実験の合間にpHの測定も行います。2群間で差は出たのでしょうか。
今回は乳酸の反応の待ち時間の間に、アンモニアの定量も行いました。こちらの作業も連携プレーが必須です。
測定結果から検量線を作成し、乳酸およびアンモニア濃度を算出します。R²値も1に近く、精度の高い検量線が引けていますね。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回はロールチューブ法による腸内菌の培養計数およびSCFA濃度測定です。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:岸)

第11回 ラット盲腸内SCFA濃度測定および、嫌気性ロールチューブの作成

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、ガスクロマトグラフィーを用いて盲腸内容物のSCFAを測定します。
また、嫌気的環境下における生菌数を測定するためにロールチューブの作成を行います。

まずは、SCFAの測定から始めます。前半の実験でも行った測定法ですが、やり方を思い出しながらサンプルを機械に打っていきます。
SCFA測定の待ち時間の間に、ロールチューブを作成します。今回はラットの盲腸内容物中に含まれる総嫌気性細菌、Clostridiaおよびビフィズス菌を培養します。
培地の種類はもちろん、摂取する菌液の希釈濃度も間違えないように念入りに確認しています。
菌液を接種したら、アガーが固まらないうちにハンゲートチューブを装置に転がします。上手に作れているでしょうか?
先生からは嫌気培養法の歴史や、いまだに培養できていない細菌が多く存在することについての説明がありました。
最後にSCFA濃度の計算を行います。
TAの説明を聞きながら真剣に計算しています。

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は今回作成したロールチューブのコロニー数測定と腐敗産物インドール・スカトールの測定です。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第12回 ロールチューブのコロニー数測定と腐敗産物インドール・スカトールの測定

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回は、前回作成したロールチューブについて、出現したコロニーを計測します。
また、腐敗産物であるインドール・スカトールの測定を行います。
腸内細菌叢の変化は見られるのでしょうか?

サンプルである盲腸内容物を量り取っています。0.1 gという小さな値なので大変ですね。
まずはスタンダードの試薬を分注していきます。ラベリングなどの作業も班員で分担して行います。
実験作業は今回で最後となりますが、ポンピングなどのピペット作業も慣れた手つきになりました。
前回作成したロールチューブに出現したコロニーの計測風景です。
コロニーなのか気泡なのか、数えているうちにだんだん分からなくなってきます。見習いたい集中力ですね!
なかには、1本のハンゲートチューブから900以上ものコロニーを数え上げた強者も!

今回の栄養生理学実験は以上です。
次回は後半の最後、栄養生理学実験の最終回となります。
今までの実験で得られた結果をもとに、水溶性食物繊維の効果について発表を行います。
それでは、次回もお楽しみに!
(担当:秋山)

第13回 プレゼンテーション

3週間にわたり、ラットの給与試験を行ってきました。
今回はいよいよ最終回、今までの実験結果・考察を班ごとにまとめて発表してもらいました。

発表前の光景です。
発表を直前にして、準備に余念がないですね。
トップバッターは5班でした。
飼料の今後の活用法についてもしっかり考えられていました。
お次は1班。
洗練されたスライドで見やすかったです。
4班です。
構造式に言及してわかりやすく説明できていました。
3班です。
真面目に取り組んだ姿勢が伝わってきました。
2班です。
ストーリー作りが上手で聞きやすい発表でした。
最後に表彰がありました。
各班の個性が見られた発表会でした。

今回の栄養生理学実験は以上です。
1ヶ月にわたる実験の内容を分かりやすくまとめて、かつ人に伝えるという作業は難しかったと思いますが、スライドの作り方や説明の仕方は格段に上手になっていました。
今後の研究室生活だけに限らず、どんな場所においてもプレゼン力は必要とされます。
ここで得た経験を忘れずに、これからも技術を磨いていってください!
実験、発表お疲れ様でした!
(担当:秋山)